はじめに
今回取り上げるのは、「新たに立ち上げる越境ECサイトに出店しませんか?」という内容の提案書です。
(私はプレゼン資料・提案書作成や、広告動画の台本作成を生業としています。詳しくはこちら)
資料作ってみたけど、相手にうまく伝えられていない気がする…
という感覚をお持ちではありませんか?
その原因はもしかすると、読者目線で見ることができていないからかもしれません。
今回は、クライアントさんから送っていただいた素案と、私が作成した完成品の資料をビフォーアフター形式で見比べながら、“読者目線”に関するポイントを解説していきます。
後半では「資料づくりの初期段階で行うこと」の解説もしているので、これから資料を作る方にも参考にしていただけると思います。
今回のポイント
解説
製品やサービスは、その開発者が考え抜いた末に生み出されるものなので、開発した側には「製品やサービスの特徴を早く伝えたい!」という気持ちがあります。
今回、クライアントさんからいただいた素案を見たときも、そんな気持ちが感じられました。
ビフォー
※具体的なサービス名を伏せるなど一部改変して、冒頭あたりの数ページのみ公開しています。
開発するときは、「みんなこういう悩みを持ってる→だったらこういう工夫を施した製品・サービスを作れば解決するじゃん!」
という順序で考えて、作ります。
だれでも「自分の創意工夫やヒラメキには価値がある」という自信があって、だからこそ売り出しているわけなので、それを他人に伝えようとするときには以下のような順序で喋ってしまいがちです。
「こういう工夫をこらしたものを作りましたよ!→これで、あなたのこういう悩みも解決します!」
めちゃくちゃシンプルな発明なら、むしろこのアピールは効果的です。
しかし、そうでない場合には、伝え方として不親切です。
なぜなら、受け手に“考えること”を強要してしまうからです。
考えなくても、なんとなく読んでいるだけで伝わってくるように書いたほうが、親切ですよね。
そう考え、私は以下のように再構成しました。
アフター
まず「うちならこういう難しさを感じることなく出店できます(あるいは、もう挫折せずに夢を叶えられます)」ということを伝えてから、「なぜならこういう特長のあるサイトだからです」という順序にしました。
どうでしょうか。
この方がスッと中身に入っていける感じがしませんか。
興味を持って、続きを読みたくなる感じもありますよね。
読み手は、今から紹介される製品・サービスを知らないわけですから、製品開発の創意工夫から逆算して資料を読み始めるようなことはできません。
わかるところから足場を固めていって、関心を引き込んでから、あなたが伝えたくてしょうがない創意工夫やヒラメキをお伝えするようにすれば、相手の心に届きやすくなります。
まずは伝えたい気持ちをグッとこらえて、読者目線で見て、相手が理解しやすいところから伝えていくようにしましょう。
人物像をイメージする
「読者目線で見る」ということについて、もうひとつ。
ほんとうは資料づくりの一歩目で、「人物像をイメージする」ということをしておかなければいけません。「ペルソナの設定」とか言われるやつですね。
基本的なことなので「言われなくても知っているよ」という感じだと思いますし、「このポイントさえおさえれば伝わる資料が作れる!」というほどの即効性もないので後回しにしましたが、やはり重要なことではあるので簡単に説明しておきます。
今回のクライアントさんは、提案書を見せる相手の人物像を、以下のように設定されていました。
1、「越境EC?なにそれ?」というレベルの人
2、越境ECの存在は知っているけど、詳しくは知らない人
3、越境ECに挑戦したことあるけど、ややこしくて断念した人
1、お酒や醤油など、こだわりのある高品質な自社製品を持つ中小規模の事業者
2、チャンスさえあればうちの商品は売れると思っている
3、感染症の流行でダメージを受けている
上記の人物像をしっかりイメージして相手の目線に立ってみると、どういう提案書を書けばいいのかが見えてきます。
たとえば以下のような感じで。
1、越境EC?なにそれ?
→「こういうことができるサイトです」ということを
はじめに簡潔に伝える必要がある。
2、越境ECの存在は知っているけど、詳しくは知らない
→競合比較を強調してもそんなに効果的じゃないだろう。
3、越境ECに挑戦したことあるけど、ややこしくて断念した
→1・2の人向けの「越境ECとはなにか?」という基礎的な解説の中に、
「あなたの失敗をカバーできる工夫が盛り込んでありますよ」
という説明も含めれば、全員に届く説明になりそうだな。
1、お酒や醤油など、こだわりのある高品質な自社製品をもつ中小規模の事業者
→「事務的な手間がかからないこと」「おまかせで集客できること」
「リスクが少ないこと」あたりを特に魅力と感じてくれそうだ。
2、チャンスさえあればうちの商品は売れると思っている
→今回の提案の機会を、
「ここに自分の活路があった!」という発見の機会として
捉えてもらえるような演出的なニュアンスも、
無理矢理感なく加えられたらいいなぁ。
3、感染症の流行でダメージを受けている
→ネットで販売に舵を切るのはありきたりだから、
逆にそんなに強いアピールにはならない。
こんなふうに、人物像から「書く必要のある項目」を洗い出したり「資料(ひいては営業自体の)方向性」を固めたりすることができます。
これだけでなんだか、道がひらけていく感じがしますよね。
人に何かを伝えようとするときは、徹頭徹尾「読者目線で見る」のが重要だということです。
さいごに
今回は「読者目線」がテーマでした。
読者目線での作業を経ずに、テンプレに当てはめて資料を作ったり喋ったりしても、暖簾に腕押しの状態になります。
「この人、ひとりでしゃべってるなぁ」という感じになります。
逆に言うと、読者目線を踏まえていれば、あとは細かいテクニック的なことを気にするだけで、相手に伝わる提案書をつくることができるはずです。
今後もさまざまな角度から資料作成について解説していくので、RSS登録やTwitterをフォローしていただくなどして、更新のお知らせが届く状態にしておいていただけるとうれしいです。
今回は以上です。
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